5分程して階段を勢いよく上がる足跡が聞こえた。 隣のお兄さんが朝帰りでもしたんだろう。
がちゃ、がちゃと玄関のドアを誰かが開けようとしている。 Qちゃんだ。
「車のエンジンがかからないんだ。誰かからジャンプケーブルが必要だな」真剣な顔で家の中に入ってきたQちゃん。
「ジャンプケーブルって誰にしてもらうの?」友達は皆朝は忙しい、アパートの住人は面識がない人ばっかりだ。
オロオロする石頭の私に「大丈夫だよ。ジョーディス(アパートのマネージャー)に頼もう」と冷静なQちゃん。 Qちゃんはいつも冷静な判断を下すあり難い人物なのだ。
さささと携帯電話でジョーディスおばあちゃんに電話をして要件を伝えているQちゃん。
「、、、、それは大丈夫です、 NANAは今日はオフですから。では、そうしましょう。 また後で」Qちゃんこんな時でも温厚な顔付きで素敵だわと感心している間もなく「NAちゃん、ジャンプケーブル手伝ってくれる?」ときた。
ジョーディスおばあちゃんは足がかなり悪いので時間がかかる、そこで彼女の替わりに私の出番という計画だ。
「それ、来た!」と薄いコートを着てボサボサ頭のまま駐車場に出向いた。 Qちゃんはジョーディスおばあちゃんから彼女の車の鍵を取りに行った。





私は車に乗り込んでエンジンに鍵を差し込んだ。親指と人差し指で鍵を回しながらガスのペダルも同時に踏みつける。車は何も反応しない。何度か挑戦をしていたら不機嫌な車さんも段々調子が上がり回復したようだ。 ほっと一安心。
Qちゃんはそのまま仕事へ、私はジョーディスおばあちゃんに車の鍵と車の応急セットを返しにいった。明日仕事の帰りにお菓子を買って、ジョーディスおばあちゃんにお礼をしよう。
