「ななちゃん、 今日はオフだね。 仕事から帰ってきたら買物にいこう。じゃ、 いってくるよ」ペー君と私にキッスをしてQちゃんは家を出ていった。
Qちゃんの後ろ姿を玄関で見送った後で見つけた。朝ご飯とお弁当を忘れていったようだ。
今から走って駐車場に行けば間に合うかもしれない。
私はブラなしタンクトップ、男用トランクス姿でカウンターにおかれたままの「忘れもの」をみつめていた。
Qちゃんは「忘れもの」に気ずいて階段をトントンと急ぎ足で上がってくるかもしれない。このまま待つことにした。
間もなくしてアパートの2階からQちゃんの水色の車が過ぎていくのが見えた。私の小さな期待は砕けた。
まあ、いいか。 子供じゃないんだから、自分で何か食べるでしょう。私はパソコンに向かった。
20分後、リンリンリンと電話が鳴った。 これはQちゃんに違いない。
「あっ、もしもし、ななちゃん。 僕、お弁当忘れたでしょう? リユックが軽かったから判ったんだ」
そうよ、Qちゃん。 お弁当を忘れていったわよ。 お昼に回転寿司でも食べにいけばいいわよ。 あと、忘れないで。家に帰ってきたら買物だからね。
今日は暑い。私は長い散歩をする予定だったがプランを延期した。
家でパソコンを叩いたり、テレビを見てぐうたらしたり、 ソファーで足を伸ばして雑誌を読んで過ごした。
なんだか吉本ばななの小説に出てくるような休日の過ごし方だなと、雑誌のページを閉じてテーブルにおいてあるアイスティーに手を伸ばしながら思った。
昼寝もした。
寝室の窓を開けてあったから、斜め前のアパート工事をしているメインテナンスと住人の会話が心地良く聞こえてくる。
その会話は実に穏やかで、私は母の胸で眠る子供のようになった感覚でウトウトと眠りに落ちた。
Qちゃんから帰るコールが鳴ったのを境に目が覚めた。 私はシャワーを浴びて「服らしい服」を着る。
Qちゃん、お帰りなさい。 買物に行くまえに先に晩ご飯を食べて行く?
「うん、そうするよ。 お腹はペコペコさ」
ランチは食べなかったの?
「うん、あんまりお腹は空いていなくてね。だけど自分の裏庭から取れた洋梨をもって来てくれた人がいたからそれで小腹を満足させたんだ。 家に帰ってきたらどっとお腹が空いてきたよ。僕の弁当が残っているだろう?」
ないよ。 だってQちゃんのお弁当は私が昼食に食べたもん。
「じゃ、晩ご飯を食べたいな。 あっ、これ洋梨ときゅうり。 彼女の庭からだ」洋梨とキュウリを頂きました。 今年の収獲もそろそろ終りです。皆さん畑の冬支度を始めているのでしょうか。有難いおすそわけです。ごちそうさまです。
晩ご飯:鯖
若芽とキュウリの漬物
野菜炒め
玄米とミレット
卵と若芽の味噌汁
Qちゃんは卵の味噌汁を2杯も飲み干した。
「知ってると思うけど、僕はコーンミールがとっても好きなんだ!」
Qちゃんはとってもお腹が空いていたに違いない。鯖の衣に付いているコーンミールを馬鹿みたいに褒めている。
食事を済ましてしばらく映画を見て、Qちゃんと二人で少し遅めの買物へ出掛けた。
買物ラッシュから2時間くらい遅いというだけで買物客の層が随分違った。 学生や仕事帰りの客が多かった。
ハローウィンの季節がキャンディーセクションを賑わしている。Qちゃんと私はいつになくキャンディーセクションで子供のようにあれよ、これよと想い出を語り合った。
今日は朝から番までズッシリとオフを満喫したような気がする。 仕事あってのオフだもの、これからも「仕事ができること」に感謝して暮らしていこう。