「ほら、言っただろ? 釜に入れる前に作品の表面を滑らかにすると仕上りがよくなるって。 君のはすこしザラザラしているだろう?」
私はジェリー先生のアドバイスを聞かない生徒だ。
 だって私の作品は自分の表れだもん。 ザラザラは私の人格、この荒さが自分らしくって好きなんです。 他人の評価ではなくて自分で評価するのが「ななさんアート」であり「癒し」なんです!
だって私の作品は自分の表れだもん。 ザラザラは私の人格、この荒さが自分らしくって好きなんです。 他人の評価ではなくて自分で評価するのが「ななさんアート」であり「癒し」なんです!と、優しくて可愛いジェリー先生に心の中でこっそり告げた。面と向かってそのような生意気なことは言えない。
 色塗の時間。 適当、適当。
色塗の時間。 適当、適当。 どうした、新聞の猫? 病気か?
どうした、新聞の猫? 病気か?  色塗完成です!
色塗完成です! 現代アートは効率的ですね。 自然乾燥ではなくてヘアードライアーで時間短縮!
現代アートは効率的ですね。 自然乾燥ではなくてヘアードライアーで時間短縮! スイッチの「強」を押して一気にブオッーと乾燥させましょう!
スイッチの「強」を押して一気にブオッーと乾燥させましょう!Qちゃん、調子はどう?
 前回のQちゃんアート、 綺麗に仕上っているね。
前回のQちゃんアート、 綺麗に仕上っているね。Qちゃんは薄い粘土を張りつけてのオブジェクトに凝っている。
 独創的なアイデアをもつ男である。
独創的なアイデアをもつ男である。 ジェリー先生はQちゃんの発想をいつも「必要以上」に褒めている。
ジェリー先生はQちゃんの発想をいつも「必要以上」に褒めている。そりゃそうだろう。
Qちゃんの相棒は自分のアドバイスを聞かないし、 授業は抜け出すし、デジカメでパシャパシャ五月蝿いんだから。
「お前はどこかから送られたスパイか? 」と疑われたこともあった。
そんな生徒と打って変わって、Qちゃんは進んでジェリー先生のアシスタントを申し出る優等生。これじゃ、ますますQちゃんが可愛くてしかたがないに違いない。
 Qちゃんの色彩感覚好きよ。
Qちゃんの色彩感覚好きよ。 そうやって1ピースずつ重ねていくのね。
そうやって1ピースずつ重ねていくのね。 ピンク系?
ピンク系? イエロー系?
イエロー系? で、 その私には何だか判らないオブジェに塗りつけるのね。
で、 その私には何だか判らないオブジェに塗りつけるのね。 同じ黄色でも微かに色を変えていくのね。
同じ黄色でも微かに色を変えていくのね。Qちゃん、 いつもの「アレ」して来ます。悪いんだけどクオーター頂戴、ソフトドリンクを飲みたいから。
 今回のブレイクのお供はペプシでいきますか?
今回のブレイクのお供はペプシでいきますか?教室を出ると雨が降っていた。
 今夜の雨は淋しい雨だな。
今夜の雨は淋しい雨だな。 帰化の試験勉強でもしておこう。
帰化の試験勉強でもしておこう。 アメリカ国旗の色は何色かだって? 赤、青、白じゃなかったか?
アメリカ国旗の色は何色かだって? 赤、青、白じゃなかったか?「ななちゃん! 見い~つけた! 授業終了30分前だから残りの作業を終えないといけないぞ」Qちゃんが迎えに来てくれる程勉強してたのか? っていっても20分くらいか。
 コーティングの準備。
コーティングの準備。 紫色のコーティングで初めは驚いた!
紫色のコーティングで初めは驚いた! だってさ、日本では透明じゃなかったか?
だってさ、日本では透明じゃなかったか? 陶芸は釜に入れるから特別な液体なのかな? そんなことジェリー先生に聞けばいいじゃないか。
陶芸は釜に入れるから特別な液体なのかな? そんなことジェリー先生に聞けばいいじゃないか。 ペタ、ペタ。 ペタ、 ペタ。
ペタ、ペタ。 ペタ、 ペタ。 ピースを筆でコーティングしていく。
ピースを筆でコーティングしていく。ペタ、ペタ。 ペタ、 ペタ。
 ピース完了!
ピース完了! パズルの枠完了!
パズルの枠完了!ジェリー先生、 このパズルを釜で焼いて下さい。「よし、じゃまた来週だ」釜の前で作品を丁寧に出し入れしているジェリー先生を残してQちゃんと私は教室を去った。
 
 

