「ペプシ? それともコーラ?」大学構内でよくアメリカ人がドリンクを奢ってくれる時に聞かれた。日本でコカコーラは体験済みだったが、ペプシはアメリカで知った。ここではコカコーラと肩を並べる程の人気振りだ。
私にはどこがどう違うのか初めの頃は区別がつかなかった。喉の渇きに通る炭酸さえあれば、ペプシでもコーラでも同じだ。
私には同じ黒茶色の炭酸飲料だが、アメリカ人はペプシとコーラの違いが判るようだ。日本人がショートライスとロングライスの区別が付くように、 彼らはペプシとコラコーラを区別する。
大学のクラスメートだったジョーさん。朝の授業はマクドナルドのコーヒカップを片手に授業を受ける。何時も隣だったからコーヒーの匂いが私を刺激してくれた。
昼の授業ではジョーさんはいつもコカコーラーのミディアムサイズを片手に登場する。 ある日私が興味本意でジョーさんに「ペプシとコーラの違いが判るか」と 聞いてみた。
ジョーさん、クラスでもヒョウキンで人気もの。大きな声で「おい!この若い日本人ギャルはペプシとコーラの味の違いが判んないんだとさ、 誰か教えてやってくれよ。まったくよ」と笑っている。
勿論ジョーさんやクラスメイトとは仲良しで皆さん日本人留学生の私をとても可愛いがってくれた。そしてアメリカのいけない部分も教育してくれた。博士から時々「NANA を"汚い"アメリカ色に染めるな」と冗談をいわれた。
ジョーさん曰く「ペプシよりコラコーラは甘い」と、他のクラスメート曰く「ペプシはコーラーより炭酸が強い」と皆さんそれぞれ意見をお持ちのようだ。
話題を提供した私を一人残して話はさらに進んでいき「オレはペプシ派だ、私もペプシ派」という者、「ふん、何いってんだ! オレは断然コーラー、 ペプシは飲めないね」なんて派閥まで出来上がっている。 ジョーさん、ニタニタしながら「お前のせいでクラスが熱くなったじゃねえか」とコーラーを飲みなが私に云った。
ジョーさんにもこのクラスメート達にもお世話になった。勿論当時講師だったスワナー博士もよく可愛がってくれた。 私が日本でQちゃんと結婚をしたと報告したら皆さん喜んでくれた。この級友達と恩師は大学の頃の二人を温かく見守ってくれた人達でもある。
残念ながらジョーさんは仕事勤務先で射殺されて即死した。ジョーさんの葬儀に参加できない私にスワナー博士から手紙が日本に届いたのは、Qちゃんと結婚してから1年立ったくらいだ。 Qちゃんを見るといつも私のことをおかしく、からかっていたジョー。 当時16才だった愛娘をとても可愛がっていたジョー。「まだ43才の若さで、とても残念に思う」とスワナー博士の手紙に書かれていた。 その夜Qちゃんと私はジョーのことを思い偲んだ。
ジョー、私とQちゃんは再びノースウエストに帰ってきたよ。ジョー、あの頃は薄くなった頭を自分でジョークにしてたけど。見てよ!Qちゃんももうそんな年齢になりました。生きていたらきっと夫婦になった私達をあの時のように優しくおかしくからかってくれたでしょう? 有難う、ジョー。