私はクリスマスに焼いたハムの大きな骨でQちゃんの大好物のソウルフード(レッドビーンズ)を昨日から煮込んでおいた。 遅い朝食と昼食を兼ねた食事は、香ばしいハムの脂がじっくり染み込んだレッドビーン & ライスだ。
ハムと玉葱を散らして出来上がり。 Qちゃん、大喜び!お腹を満たした後、二人は図書館に向かった。
途中、車のバッテリーの調子がおかしくなってきた、車の凡ゆる電気が段々薄れていく、、、、。ひょエッー!!!混雑する道路の真ん中だ、こんなところで突然車が止まったら大変! なんとか車を近くの駐車場に止める。
Qちゃんが車のフッドを開けて点検している。難しそうな顔をして何度も首をかしげているQちゃんの姿を車内の助手席で見守る私。Qちゃんは車のフッドを下ろし、車に乗り込んで大きな溜息をついた。
「車荒らしかな。いつ荒されたのかな。昨日の夜か、会社の駐車場かな。 だけど、そんなことされる理由はないんだけどな。」いつになく真剣で厳しい顔のQちゃん。「それに、どう考えてもおかしいんだ。」Qちゃん何か納得がいかない様子。「どうしたの?」と訳を聞いてみる。
「バッテリーを盗むなら判るんだけど、盗まれていない。バッテリーから繋がっているワイアーがあるんだけど、おかしいのはそのワイアーが中途半端に切られているんだ。 嫌がらせならナイフなんかで奇麗に切って断片もきれいなはずなのに、このワイアーの断片はバラバラで途中までしか切られていない。 これはどうもナイフで切られたみたいじゃないんだよ。エンジンの熱で焼けるってこともないだろうしな、、、、。」Qちゃんがこんな顔を見せるのは久し振りだ、なんて呑気なことを考えてる場合じゃない。
こんな時に限ってどうして冷たい雨が降っていて傘を携帯していないんだろう。完全に止まった車をその場に残し二人で近くのメカニックサービスまで歩いて行った。
優しい対応をしてくれたメカニックのビルさんに事情を説明する。Qちゃんの説明を聞くと「ねずみだね。よくあるんだよ。冬場になると寒さを防ぐ為に車のフッドの中に巣を作るんだ。 それでワイアーなんかをかじるのさ。 実際に点検してみないことには何も云えないけど。取り敢えず車をここにもって来てくれないか?」さすがプロ、率直な反応だ。時期が時期だけに忙しいビルさん、トーイング会社の名刺を手渡して工場の中へ消えた。
土砂降りの雨の中を再び車の置いてある駐車場まで帰り、トーイング会社に連絡をした。トーイングサービスが来るまでBURGERVILLE USAで寒さを凌ぐことにした。
BUGERVILLE USA はワシントン州バンクーバーとオレゴン州ポートランド地域に広がる地元のハンバーガーとシェイクがおいしいファーストフード店だ。ランチを食べたばっかりでお腹は空いてないけど、時期限定のユーカンゴールドポテトのフライドポテトを頂くことに。 ミントココアを飲んで温まろう。Qちゃんはコーヒ。うん、体が温まったぞ。窓から見る景色、雨の中仕事をする人々。今このレストランにいる客達や店員は私達の車の事情を知らない、私達も彼らの暮らしや事情を知らない。ただ判っていることは、このレストランで其れ其れが体を温め、お腹を満足させ、ある時間を過ごし、いつか去っていく。これが時期限定のユーカンゴールドポテトか。形もユニークだし、モッチリサクサクで美味しい。Qちゃんはビネガーで頂ます。天井に浮かぶ風船は子供セットに付くおまけ商品みたい、さっき赤毛の女の子が黄色の風船をもらっていった。お外でまったり過ごすのもいいね、って言ってたらトーイングサービスが来たみたい。
Qちゃんは急いで席を立ち、レストランを出てジャケットの帽子を被ると、雨の中を走っていった。 遠くの駐車場でQちゃんとトーイングサービスの男の人が話をしている。暖房の効いた温かいレストランで私は冷え切った残りのミントココアを一気に飲み干して、二人の姿を遠くから見ていた。
雨は降り続いていて止みそうにない。Qちゃんがポケットに手を入れて体を小さくして足速にこちらに向かって来る、交渉は終ったようだ。
トーイングサービスがメカニックまで車を運び、私とQちゃんは冷たい雨の中急ぎ足で家路に向かった。
信号で待つ度、Qちゃんはずぶ濡れの私を気遣った。私は寒さで凍ばる頬を無理矢理広げて笑顔で対応した。寒さが突き刺さすように痛いけど二人だと心はホカホカ温かい。「ドキドキするアドベンチャーだね。」Qちゃんが私を励ますように言った。「そうだね。」Qちゃんを安心させるように雨で濡れた笑顔で応えた。二人とも前向きな態度で情況に対応した。Qちゃんと二人ならどこまでも行けると、長い信号待ちの雨の中、通り過ぎる車を見ながら感じた。
家に帰って、二人とも安堵の息をついた。Qちゃんが二人の濡れたジャケットをハンガーに掛けて乾かしている間、私は二人のご褒美に温かい飲物を作ることにした。この小さいアパートは温かくまるで天国のようだ。
一服していると電話が鳴った、メカニックのビルさんからだ。 Qちゃんが受話器を取って話している、時々私に笑顔を振りかけるQちゃん。「.....all right. Thank you, bye.」電話を切る。
「やっぱり ねずみだったみたい。修理の見積りが$300 だよ。」とQちゃん。 「この車ずっと調子良く走ってくれたんだから$300 なら いいんじゃない? 」と私。 「そうだね。」とQちゃん。
軽い晩御飯にして今夜は早く寝ようか。雨にさらされ体が震えた今日、暖房の効いた部屋でご飯を食べられることは心底から有難いことだと実感した。
メキシカンピザトースト
レッドビーンズ
紫キャベツと人参とレタスのサラダ
「どうしてねずみがあんな悪戯をしたか判る?」ベットの中でQちゃんが聞いてきた。自分から聞いてきたのに私の答えを待たないで「来年は ねずみ年だから、 自分をアピールしたかったのさ。かわいいね、ねずみちゃん。」ねずみに$100 札を3 枚もかじられて「鼠年だから許してチュー」なんて言い訳されても、私ならかわいいとは思わない。こんな愛でたいQちゃんと一緒に暮らす私って愛でたいのでしょうか。