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パレスでの二人の会話はもう胸をときめかす恋人みたいな会話ではない。
だけど、どうだろう?
後ろの席の老夫婦。 黙ったままで時々忘れていたかのようにお互いに話をしている。
これって私とQちゃんみたい。
別に無理をしてデートの相手をエンターテイン しなくてもいいんだろうね。あの夫婦みたいにある年月を共に過ごしたら。
「うん、そうだね」Qちゃんがジャスミン茶を飲みながら呟く。
食事の後は買物へ。
「Qちゃん、Qちゃん、あのおじいちゃんとおばあちゃんのカップルすごくかわいい!」ヨレヨレのジーンズをはいてカートを押すおじいちゃんを見て私は言った。
「ホントだ、かわいいな」と二人には判らないように日本語で答えるQちゃん。
買物リストと鉛筆を手にし た可愛いおばあちゃんがおじいちゃんの前を歩いている。
人の体にはその人のいきざまが表われる。 私はそう信じている。
この老夫婦、幸せなんだろうな。 少なくとも私にはそう見える。
夫婦喧嘩もしただろうな。 だけど今まで一緒に暮らしてきたんだろうな。
ああなりたいね。
「うん、そうだね」Qちゃんがクリネックスの箱を選びながら呟く。