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3年前カリフォルニア旅行でレインさんの撮影現場を拝見させて頂ました。 奥さんは作家として活躍しております。
テレビのキャラクターとは大違いのレインさん。お宅に足を運んだ時は息子さんに野菜スープを食べさせている大変子煩悩な新米パパでした。レインさんのプロフィールはこちら!
カチャカチャとキッチンから食器の音がする。 眩しい朝の光とともにジャスミンティーのにおいが漂う。
レット伯父さんだ。
レット伯父さんの朝は早い。 朝一番で心理学の授業があるのだろう。
3日前12年振りにこの家に足をいれて最初に目にしたのは前と同じひんやりとした観用植物とウェンディ叔母さんのアートで敷き詰められ静かな空間。
そしてテーブルにきちんと重ねてある山積みのレポート。ディスナー教授の授業を受講する生徒達のものだ。大学は調度中間試験ウィークだったのだ。
伯父さんは私を見つけるとレトロなティーポットで沸かしたジャスミンティーを「飲みますか」とあの優しくおっとりとした口調でいった。
伯父さんは少しの間だけ私と話をしてキッチンの奥の自分の書斎に姿を消した。
その頃にはQちゃんも目を覚まし朝のキッチンで日本茶を飲みながらルイストンからオレゴン出航の準備を始めていた。
しばらくして採点をした学生達のレポートを左手に抱えたおじさんが書斎から出てきた。
「時間だ。もう仕事にいかないといけない。12年振りに会えてとても嬉しいよ。 クデュースといっしょにまたいつでも遠慮なくルイストンに遊びにおいで。部屋はいつでもあるからね」
背の高いレット伯父さんの腰に抱き付いて私は伯父さんとの12年振りの再会に終りを告げた。
レット伯父さんは黒いベレー帽を被ると家を出ていった。
私とQちゃんが伯父さんを見送ろうと家の外に出ると伯父さんのベージュのコートを着た後ろ姿がアイダホルイストンの秋紅葉に同化されていた。
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ウェンディー叔母さんは夜型人間だ。 まだ朝の8時前。 スヤスヤ眠っていることだろう。 Qちゃんと私は置き手紙を台所のテーブルに置いてディスナー家を去ることにした。
ルイストンを朝出れば夕方前にはオレゴンポートランドに着くだろう。二人は荷物を車の中に詰め込んで伯父さんと叔母さんの家を後にした。
この想い出旅行には目的があった。
それは18歳だった無鉄砲な日本人留学生だった私を支えてくれルイストンの友人達に再会をして「自分の成長」を確かめることだ。
これほど迄にアメリカの大地に恋し、この地で会った男と生涯を共にすることを決め、更にはこの大地で生涯を終えようとさえ考えるようになったのはルイストンが「原点」になっている。
「原点」が悪ければとっくの昔に日本に泣き寝入りをして帰っていただろう。
何度も書くが私は「人」には恵まれてきた。
言葉を替えると「ルイストンでの人との出会い」が後天的「私の國アメリカ」と仰ぐようになった「原点」だったような気がしてならない。
この理屈を兼ねて私は自分が影響を受けた人々、その人達と戯れた建物をルイストンを去る前に12年振りにもう1度この目に収めておきたかったのだ。
Qちゃんにしてみても馴染み深い人々と建物だ。快く同意してくれた。