2008年5月10日土曜日

コーヒーテーブルの秘密

結婚生活は木造アパートの6畳一間。 テーブルはスーパーからもらってきた愛媛の蜜柑箱。何もないところから結婚生活を始める。結婚とは「そんなものだ」と子供の頃から思っていた。

二人の生活がスタートして何もないアパートに段々と少しずつ茶碗が揃い、タオルが増えて、訪れる客用の布団を買うころには「もう少し広い場所」に引っ越す。結婚とは「そんなものだ」と子供の頃から思っていた。

そう考えていた結婚前の私。

縁あってQちゃんと結婚したが結婚当初から二人は予想外に恵まれていた。

結婚当初は金沢の実家を間借りさせてもらっていたから、家具や生活用品はすでに揃っていた。

台湾にいたころも3階立ての「う、うそでしょう? 」というほどのお屋敷に住んでいた。

若い二人には使うことのない4つのゲストルーム。リビングの床はもちろん台湾大理石。広い屋上からは果てしない緑茶畑が見渡せ、青々しい山房の空気を胸一杯に吸い込む。 念願の2匹の番犬ジェリーとロスティーと共に台湾台東での贅沢な新婚生活をさせてもらった。申し訳ない程の環境。

料理好きな私は発音の悪い中国語で毎日食料市場やショッピングをして歩きまわった。そんな中、Qちゃんはムンムンした真夏の台湾で語学学校を運営しながら英語講師をしていた。

私も共同経営者として日本語/英語を教えてクラスに立ったり、プライベートレッスンのため会社やお家へサンサン照る太陽下を日傘を差して通った。

あの頃は若かったからだろうか。毎日興奮で溢れる夢のような「海外暮らし」だった。あの充実した暮らしはかげろうだったのだろうか。 年を重ねていくたびにそう思う。

ハワイでも義理パパブルークスの家をハワイ値段にしては比較的良い値段で借りていた。公務員のQちゃんの手取りだけで贅沢をしないなら二人で充分にノンビリと暮らせていけた。

なのに、

私は旦那にも家族にも環境にも物質にも「恵まれ過ぎて感謝できない人間」になっていた。

「もっともっと」と欲がでて、これらの「宝もの」をあしらって扱っていたのだろう。

私は今のところ基本的には神を信じていないが、自然の法則「見えない力」が愚かな私を戒めるためにそれまでの優雅な暮らしを私から取り上げて何もないところからやり直すように仕向たのではないかと思うのだ。

そんな意図的出来事が自分に起こって初めて「自分の魂に大切なもの」を発見した。

今の私には必要でない贅沢品はいらない。収入が減ったという事実もあるが欲しいものはなくなった。昔の暮らしとは違う、今の暮らし。

Qちゃんが帰ってきてくれて一緒に夜を過ごせればいい。それが「自分の魂に大切なもの」。

昔も一緒に夜を過ごした。 あの頃もQちゃんの肩にもたれて夜を過ごした。

昨日、今晩、明日もQちゃんの肩にもたれて夜を過ごすだろう。けれど私の気持ちが違う。

あの頃Qちゃんに伝えた「ありがとう」。今Qちゃんに伝える「ありがとう」。内容の深さと濃さが増した。

1度経験した贅沢な暮らし、その生活レベルを下げるのは難しい。然しやってみると慣れるものである。

結婚とは「そんなものだ」と思っていた「そんなもの」生活をしてみると意外とワクワクして楽しいもんだ。

結婚生活12年。Qちゃんと「新婚さんごっこ」をして新婚気分で暮らせるのも「何もないアパート」に住んでいるからだろう。

このアパートにはキッチンテーブルがない。昔のように客を呼んで夕食を楽しむことをもうしていないからだ。

ここに入居した時はQちゃんと私は新しい暮らしに慣れることであっという間に毎日が過ぎていった。

友人と呼べる心の許せる人間も当時いなかったこともある。それに友人を招待する時間も心のユトリもなかった。

ここ1年くらいから徐々に心のユトリがでてきた。 私も昔のように食事に招きたい人間に出逢えた。

最近はアパートの2階まで運べる軽いテーブルを捜している二人。 やはりキッチンテーブルがあると「素敵な人達」とお茶や夕食を食べるときに便利だ。

そんな我が家にあるのはただでもらった白いソファー。我が家のお客さまにはこの白いソファーで寛いでもらう唯一の家具。

その白いソファーの前にあるコーヒーテーブル。 お客さまに飲物やおつまみを味わってもらう我が家の唯一のテーブル。「木目で素敵ね」とブログを見てコメントしてくれたさきちゃん。約束したね、いつか 「テーブルの秘密」をブログに載せるって。

その時がきました。これテーブルじゃないの。 レンジの箱を下にしてその上に木板をのっけているだけなの。料理好きな私にはレンジはなくてはならないもの。アパートに入って直ぐに買ったものはレンジと炊飯器。

木造アパートの6畳一間ではなくて、オレゴン州の1ベットルームのアパート。

「愛媛の蜜柑箱」ではなくて、「メキシコ産の電子レンジの箱」のテーブル。

何もないところから結婚生活を(再び)始める。結婚とは「そんなものだ」と子供の頃思っていた。これが私達夫婦の何もないところからの新婚生活。

何もないところから暮らす。

私とQちゃん夫婦は生活レベル「6」から 始まって「―3 」になって、 再び「0」になったようだ。

私の車も、結構稼ぎのいい仕事も、貯金も、ブルークスパパへの信頼も、沢山の台所用品や食器も、 家を華やかせる家具も全部なくなった今。

けど、お互いを大切で必要だと感じて暮らすことができるようになった二人。失くして得るものがある。それはこの「二人の時間がもてる暮らし」だった。

キッチンテーブルがない二人。 白いソファーに深く腰をかけながら黄色いお皿を 手にして今晩も夕食をいただきます。 喧嘩をしても、 笑っていても、 深刻な話をしていても二人で食べる晩ご飯。 大切な二人の時間です。

豚肉とブロッコリーのトマトソース炒め
和風コースロー
サワークリームポテト
レント豆&ミックスチャーハン

食生活レベル。これでも肉と油は減って野菜が増加した。まだまだ油と肉はレベルを下られない。欲なのかな?

追伸: さきちゃん、ついに木造旁りのコーヒーテーブルの秘密が明かされました。 同時にQちゃんとの過去の生活環境を回想する機会が与えられて、それを記録に残せました。 ありがとう。