どんなに月日や距離が離れていても再会すると「1年前と変わらない」気がする人間がいる。それを私は「貴重な友達」と呼ぶ。そして「貴重な友達」はとても少ない。
けれど私は淋しくない。どうでもいい「知り合い」と年に数回顔を会わせるよりも「貴重な友達」とメールで数回会話を交すだけで心が満たされるのだ。
けんじくん。彼は「貴重な友達」だ。
18才でアイダホの大学で彼に出逢った。この出会いなくして「アメリカの今の私」は存在しない。 私の人生がここまで来るには「けんじくんの存在は必然的」だったと思う。
結婚してからたくさんの人間と連絡が途切れた。私は「出会い」や「再会」を天に委ねることにした。
今年ミクシーでけんじくんと12年振りに再会した。彼は仕事でシアトル勤務になったのだ。 私は驚かなかった。
彼が住むシアトルと私が住むポートランド。車で4時間、飛行機で1時間。再会は確実だ。あとは時間の問題だ。
けんじくんとは「縁が切れる」ということはない。ここ12年以上私の頭のどこかでそんな予感がしていた。だから連絡が取れなくても平気だった。そんな強気な私がいつも存在していた。
昨日の朝けんじくんからメールが届いていた。
「今週末ポートランドに行くから会えたらいいな」というものだ。 さっそく残されていた彼の携帯に電話をした。彼のボイスメールに英語でメッセージと私の電話番号を残して仕事に出た。
「今の私」は例え相手が日本人であっても日本語より簡単な英語の方が口から出てくる。その方が便利で都合がいい。最早私の日常会話は日本でいうと「ルー大柴さんの言葉」のような響きなのだろう。そして「私の貴重な友達」は皆そんな私をナチュラルに受け止めてくれる。
「青い鳥」はどこかの童話で「幸福の鳥」だと呼ばれていた記憶がある。 あれは本当なのだろうか。
けんじくんからのメールが届いた昨日の朝。仕事に行く途中私は木に止まっている「青い鳥」を目にした。その日の仕事帰りにも「青い鳥」がどこからか飛んできて通りすがりの木に止まった。
そして今朝の出勤途中も「青い鳥」が木の上から私を見下げていた。今日も帰宅する道で「この再会の機会を逃すな。きっと幸福を運んでくれるから」とまるで予言しているかのように「青い鳥」が低木に止まって急いで帰宅する私を静に見守っていた。
アパートに着くとQちゃんに「ただいま」といわないで「けんじくんから連絡はあった?」ときいた。
「もちろん!2回も電話があったよ!」とQちゃんが答えてくれた。
私が仕事をしている間にけんじくんと彼の友人家族とQちゃんの間で今夜の「12年振りの再会計画」が練られていた。
私はシャワーを浴びて仕事の汗を軽く流した。胸が弾む。あのけんじくんが、すぐそこにいる。 私の心は一足早く彼に再会していた。
待合せの場所でけんじくんが立っていた。 直ぐに「彼だ」と判った。彼はあの時のままだった。 言葉どうり「あの時のまま」だった。
けんじくんがポートランドで泊まっている友人宅はよしやすくん。 彼のメールにそう書かれていた。
よしやすくん? 誰だろう? 私の知っている人? 15年前のことだもの。すでに名前だけでは想い出せない人物になっている。
「会うと思い出すよ」昨日電話でけんじくんが昔のままの少し低くこもった声で私にそう言ったのを思い出す。
けんじくんのいったとうりだった。よしやすくんを一目みて「あのよしやすくんだ!」と薄れていた大学時代の記憶細胞がピリピリと動きだした。
けんじくんも全然かわっていないけど、よしやすくんもかわっていない! あの時の面影がくっきり残っている。
変わったといえばよしやすくんが「子煩悩なパパになっていた」こと。だけど「ユーモアとオトボケをしてくれるセンス」はあの時のままだ。嬉しかった。
再会の幕が開かれた。
皆で歩いていけるすぐそこのインド料理レストランで軽いディナーをとることにした。
それぞれオーダーをとり料理がテーブルに運ばれるまで15年前のキャンパスに戻り話を弾ませた。テーブルにいる彼らは私の青春の同期生で「あの頃の自分」を思い出す。
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キーマカレーのアラカルト。
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小麦のかわりに豆粉を発酵して作られた南印度料理のクレープ「ドーサ」をQちゃんがオーダー。
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ドーサは長さ20 cm はある!
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中にはスパイスのきいたじゃが芋が入っている。
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ピリッとしたスープにドーサを付けて食べる。 うん、始めての味。 おいしい。
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茄子のカレーアラカルト。
弾む話で写真は取れなかったけどベジタブルサモサなどの前菜も皆でつつきあう。
お腹に印度料理が通過していくからか、それとも「貴重な友達との再会」に感激しているからか? 私の体は熱くカッカカッカしている。
はい、時間です。 忘れる前にブログの写真撮影です。
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けんじくんと私。
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お酒が入っていないのにどうしてこんな馬鹿丸出しの顔をしているの私? 嬉し過ぎてハイテンションになっていたのかしら。
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Qちゃんと写真を取ってもこんなにいい顔はできないよ私。
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Qちゃん、この可愛い男の子。 誰の子供なのよ。 まさか、ノースウエストの「隠し子」じゃないでしょうね?
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よく笑う子は周りを笑顔にしてくれます。親がよく笑うと、子もよく笑う。これは大切なことよね。あっぱれ!よしやすくん御夫婦。
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相棒のひろしくんといつも大きなアメ車の前に立っていたよしやすくん。 白いティーシャツ、 ジーンズ、ブーツ姿がトレードマークだったよしやすくん。当時「近ずいてはいけない男の匂いがした(笑)」よしやすくん。
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そんな彼がこんな可愛いい子供を「お行儀が悪いでしょう!」と叱っている姿。15年前のあの大学構内で誰が予想できただろうか?
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それに、よしやすくんの奥さん。 日本語が堪能! すばらしい!子供に日本語で仕付をしていました。
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ねえ、よしやすくん。 あなた、どこで、どうして、どうやって、こんなに知的で素敵な奥様と美しい2児をもつパパになったのよ? 驚いたわよ!
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満足、 満足の幸せな夜でした。
「青い鳥」は「幸せの鳥」。 童話ではなくて実話なのかもしれない。
この日、私はよしやすくんからアイダホを離れてから連絡が途切れていた「大切な人々」の近況を得ることができた。
さっそくこのブログを掲載したことをけんじくんとよしやすくんに報告して、 音信不通だった大切な人達の連絡先を聞いて彼らにメールしてみよう。 驚くだろうな、きっと。
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けんじくん、 よしやすくん、 会いにきてくれてありがとう。 素敵な人に会える。また会えるまで頑張れそうです。