2008年7月28日月曜日

オレゴンベリー狩り

ベリー好きなQちゃん。 ベリー産地のノースウェストで育った彼にとって「ベリー摘み」は子供の頃のメモリー。

「いつになったら僕達はベリー狩りにいくんだい?」とQちゃんは腕を組んで私にたずねる。

ベリーパイなどに興味がない私には「ベリー狩り」にうつつをぬかすほど暇はない、と目を丸めていたのだった。

この季節恒例のベリー狩りを楽しむオレゴニアンの知人らはよくベリーをおすそわけしてくれる。

「旦那はベリーが好物でベリー狩りに行きたいみたいだけど、私はどうも、、」と口をモゴモゴしていると、 「じゃ、ベリー狩りにいってあげないと! 折角オレゴンにいるんだから!」と乗り気でない妻の私に追い討ちをかける。

Qちゃんに壊れたラジオのように何度も何度も「ベリー狩りにいかないと季節が終ってしまうよ!」と涙声で懇願されると相手の提案に無理してまでも異義を唱えたくなる。

そう、私は天の邪鬼。

好きな知人から「ななちゃん、もうベリー狩りに行った? そろそろシーズンが終っちゃうかもしれないよ。 行くなら、今だよ」とソフトに云われると相手の提案にそう敏感にならない。異義を唱えなくてもよくなる。じゃ、いってみようかなという気が沸いてくる。

「もう僕は我慢できない! 来週のオフの日にベリー狩りの予定を入れるからね。 そのつもりでいてくれよ」

普段は「羊」のようなQちゃんだが、あまりにも妻が非協力的なので独裁政権にでたようだ。

それほど「ベリー狩り」が彼の欲求を満たす度合は大きいのだろうか。どうやら非常事態におかれたQちゃんは「雄」という攻撃的な本性を表したようだ。

オフの朝はいつもゴロゴロ猫みたいにソファーでゆっくり目を細めて幸せそうに緑茶をすすっているのに、今朝はインターネットで「オレゴン、 ベリー狩り、 農場」たるタイトルで情報サーフをせっせとしているではないか!

Qちゃんは真剣な顔で農場の住所と行き先を紙に記入している。

新聞の広告欄を読む振りをして横目で観察していると、 Qちゃんが床から素早く立ち上がり寝室に消えた。

ベリーの種類、その値段、篭を持参すべきか、営業時間などについて直接農園に電話をしている。

立派なものだ。 そのくらいの意気込みで昨日私の足の裏と片を揉んでくれたらよかったのに。

「はい、 いきましょう!」旅行者相手にハワイ島で短期ガイド/バスドライバーをしていたQちゃん。 「はい、シュッパツです!」とか 「はい、 いきましょう!」という団体を促す号令的日本語だけは今でも忘れてはいないようだ。団体っていったって引率するのはペー君と私だけなのに、本人にとってベリー狩りは夢にまでみたイベントなのだろう。とてもテンポが高潮している。いつものあれね。運転しながら上着を脱ぐのは危ないから止めて!ってQちゃんの助手席で言い続けて16年。Qちゃんさ、善人な顔をしてるけど人の話を真剣に聞いてないもんね。だったら私も私で対策方向を変えて「運転中車内禁止行為」にもっと寛大になるべきかしら。田舎道をのこのこ運転して30分くらいで着きました!Qちゃんの仲間があそこにいるじゃない。天候は曇。もう昼過ぎだもん。家族連れは少ないね。 ブルーベリーは低木に成るのね。初めて見た。これはじゃが芋畑。こういう景色を見て暮らしていたら心がしっとりするだろうな。また土いじりをしたい!野菜菜園を作りたい!Qちゃん、どこに行ったのさ?「はい! ベリー収獲を始めましょう!」Qちゃん、乗ってるね。ペー君、これがブルーベリーの木だよ。せっかく連れて来たのにあんまり興味がなさそうね。今日はバタバタして落ち着きがないわね。ぎゃ~! ペー君、 大丈夫?機嫌が悪いのね。じゃ、一人にしてあげるわよ。ペー君、採ったブルーベリーをこのボールに入れるのよ。こうしてベリー狩りをしてみると楽しい。喫茶店で紅茶を飲みながら二人で御喋りもいいけれど、 空気の澄んだ大地に足を広げてベリーを摘みながら昔話をするほうが珍重な過ごし方だわ。
こっちにはラズベリー。棘があって痛い。この大きいベリー見たことない。 「ボイセンベリーだ」横でQちゃんが確定するこれはブラックベリーでしょう?

「こんにちは! ブルベリーは収獲時期かしら?」 と親子連れが姿を見せる。ここは夏休みに子供を連れてくるには最高の場所。ラニママも小さいQちゃんとお兄ちゃんのデービットを連れてベリー狩りにきたんだろうな。「父さんが子供の頃ベリー狩りによく来たんだよ」と写真の彼らも大人になって家庭を持って自分の家族や子供を想い出のベリー狩りに連れてくるのかな。

たくさん採れたね。ペー君、疲れたでしょう? 車で休みたい?遠くから人の話声が聞こえてくる。 他人なのに「この農園」ではなんだか家族みたいな気分になる。農家で暮らすって家族作業なんだろうな。おじいちゃんやおばあちゃんが孫に技術を教えていく姿。 核家族で育った私にはそういう家族作業っていう想い出、 あるかな。土、 水、 草、太陽の光、風、石。 自然の中で作られた水溜り。人工的な安らぎもいいが、飾りのない安らぎが好きだ。
もう2時間くらい過ぎたね。そろそろ帰えろうか。最後にこれQちゃんと私に一粒ずつ。今日の収獲です。これ全部で$9! ひゃ~安い!車に戻ってみると、ペー君がすやすや昼寝をしてます。起こさないようにお家に帰りましょう。今日は日常暮らしから飛行して田舎の安らぎを得た。過ぎ行く季節。 また来年になればここに来るのだろうか。その時私は何を心に想いベリーを摘んでいるのだろう。カントリーロード。 私とQちゃんが所属する場所に連れていってほしい。ノースウェストのどこかなのだろうけど、どこなのかな。 それはカントリーロードだけが知っている。Take Me Home Country Roads を聞きながらQちゃんと二人でカントリーロードを走る。