「最近ね、日本でおもしろいネーミングの食品が売れてるみたいよ」仕事のボスさんが話してくれた。
仕事のボスさん。「キャンディーズのらんちゃん」に似ていると思って2年が過ぎようとしている。(伊藤蘭さん(上)はただいま俳優水谷豊さんの奥様です。)
「なんでもね、『男前豆腐』ってのもあるらしいわよ」着物を着せると日本人形のような仕事のボスさんがいう。
なぬっ!男前豆腐!
どんな豆腐だ、その「男前豆腐」って!
絹のように肌がツルツルで色白で、味はウットリ、食べ後はまた食べたくなる程の男前なのか! それだったら「女豆腐」にしたほうがいいんじゃないのか?
仕事のボスさんの情報を横で半分聞きながらそんなことを頭の中で考えていた。
それから数日後、体が小さくて細い仕事のボスさんが大きなハッポースティロールの箱を抱えてテーブルの上にどしっと置いた。
「はい、これがこの前話してた『男前豆腐』だよ。 いっぱいあるから家にもって帰ってもいいよ」
やった!ついに男前な豆腐に会えるのか! どんなにカッコイイ姿をしているのだろうか。
胸の鼓動が期待で早くなる。ハッポースティロールの箱に近ずく私の足も早くなる。
ご対面!
箱の中の男前な豆腐を見る。あの、、、、、あなたが本当に「男前豆腐」なのですか? それにしては期待外れの外見(パッケージ)ですね。仕事のボスさんに「男前豆腐」の第一印象をそう報告する。
「味はいいはずよ!」とぴしゃり。 東京下町出身の仕事のボスさんはいつもカラッとしている。そんなところは大好きなひまわりさんと似ている。
そうだよね、仕事のボスさん。人間も豆腐も外見より中身が大切よね。
だけど「男前豆腐」とリキむ割にはシンプルなんだよね。なんか「フ」に落ちないんだよね。
普通の豆腐と「男前豆腐」何がどう違うのか、パッケージに書かれた製品情報に目を向ける好奇心のある私が発見したのは!
仕事のボスさん! こ、これっ! 見て下さいよ! ネーミングが違いますよ!「オト『コ』マエ」ではなくて「オト『シ』マエ」って書かれてありますよ!
きゃははははは! 仕事のボスさんと周りにいたスタッフが笑った。 発見した私もかなり笑った。
笑いの渦が朝潮のように引いたあと、一人の日本人スタッフがぽつりと言った。
「けど、『落し前豆腐』っていうネーミングの豆腐もよく考えると恐いですよね」
パンチパーマの恐ろしいお兄さんに「この豆腐を食ったからには、落し前をつけてもらおうじゃないかい!」と怒鳴られるのだろうか。
それにしても 「オトシマエ」というのはどうも豆腐製造会社の名前のようで品物のネーミングではないようだ。 パッケージを読んで私は思った。仕事のボスさんは、たまに早とちりをする憎めない可愛い女性なのだ。 (このブログを書いていてわかったことだが、実は仕事のボスさんは早とちりをしていなかったことが判明! それは後で明かされる! )
その日、仕事を終えて無事帰宅しようとしていた私。 仕事の友達に「美味しい豆腐があるけど食べた?」と従業員ラウンジで「男前豆腐」を勧めてみる。
すると、
「あ~、『ジョニー』でしょう? 美味しかったよ」という意味不明な返事が返ってくるではないか!
違う人に豆腐があるけど食べたかとまた懲りずに聞いてみると、「ジョニー」をオフィスで見かけたが手をつけなかったという第二の証言。
「あの青くて長い『ジョニー』でしょう? 」第三者の証言が続く。
「ジョニー」という名の豆腐。 いったいどんな「奴」なのだろうか。どうもジョニーは長身で手のつけどころがない怪しげな青男らしい。
その証言を元に「ジョニー」の足取りを辿ってみると! きゃ~!いたいた! 「ジョニー」がいたいた! これぞ、私が期待していた「男前豆腐」!そうか「ジョニー」は風に吹かれているのか。 豆腐屋に修行しているのね「ジョニー」。朝早い豆腐の仕出しは辛いのね。 一足仕事が終えたら、海の風にあたって一休みってところを想像しちゃうわ。
なんだか亡き石原裕次郎が海のデッキに足をかけている姿と重なるわ。 素敵よね、「ジョニー」。まっぷたつに切られても、 「ジョニー」は斜め目線で海辺の女達の視線を釘付けにするのね。 「ジョニー」に首ったけ!さて、「ジョニー」はどんな味がするのかな。 いただきます。
最後になりますが、仕事のボスさんが言っていた「男前豆腐」。 よーく「ジョニー」のパッケージを見てみると「日本国男前豆腐店」という素晴らしい名前が青文字で印刷されているではありませんか!
「豆腐屋ジョニー」と「落し前豆腐」と「男前豆腐」、毎日忙しい仕事のボスさんが困惑するのも仕方ないことです。
「豆腐屋ジョニー」のサイトもあるのでお暇があれば覗いてみてね!