何か暮らしに刺激が欲しかった。
あの頃の私はいま考えただけでもぞっとするほどいつも不幸せの女だった。心が腐りかけていた。
「何か」を求めていた。「何か」とは「絶望だと思っていたその時の暮らし」から逃げれる場所だ。
そんな時、陶芸教室の広告が新聞のちらしに入っていた。
興味が沸いてきた。
何度もちらしの電話番号のダイヤルを回そうかと受話器を取った。陶芸教室の近くにある石段の坂道を行ったり来たりしたこともあった。
しかしあの頃の私には陶芸教室のドアを叩く勇気がなかった。人と関わることが苦しかった。日本にいる自分が惨めで不幸で嫌いでたまらなかった。
陶芸広告は地方新聞と近所のスーパーのちらしとともに我が家に定期的に届けられた。
それを見る度に何かしら言い訳を見つけて「今は忙しいから、また今度の機会にしよう」と意気地なしの自分に言い聞かせた。
あれから12年。「生きている間に私がしたいことリスト」には陶芸が上位に挙がっていた。
オレゴンに引越してから陶芸クラスの広告を見かけるたびに「あの欲望」がメラメラと燃えあがった。しかし「仕事が忙しいから」と言い訳を見つけては延期していた。
今年に入ってまた陶芸クラスの広告を見た。今回は受講してみる勇気がある。2か月前から登録を済ませた。
仕事の都合情、毎週火曜日の夜6時半から9時半のクラスに登録をした。仕事のボスさんにはクラスに通う3ヵ月間は火曜日と水曜日をオフにしてもらうように協力を求めた。
そして今晩がクラス初日だ。Qちゃんはお仕事。家に帰って夕食を済ませて陶芸クラスへ向かう。
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蒸しじゃが芋
セロリのピクルス
玄米
施設にはトレイルもあるから授業前に散歩を楽しむQちゃんと私。
時計の時間が6時半になりつつある。 私とQちゃんは教室のドアを開ける。陶芸クラスの始まりだ。
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