中を覗くと黄色の形のヘンテコな果物がゴロゴロしている。不格好な形の割にほのかに甘いフルーティーな香りをかもしだしている。
「これ、 かりん。 煮て食べたり、かりん酒にしたりして食べると美味しいよ」当たり前のように、としさんが言う。じゃあね、と仕事がオフのとしさんは去って行った。
かりん、名前は知ってるけど実際に果物を見たのは初めて。
英語で「かりん」は何て言うのかアメリカ人の同僚に尋ねる。「QUINCEだよ。パイのフィリングにしたり、ジャムにして食べるんだ。」アメリカでもよく食べる果物らしい。
「どんな味がするの? 生で食べれるの? 」私が聞くと「とんでもない!固くて林檎みたいだけど、 味はすごく酸っぱいんだ。 絶対に生では食べないように!」酸っぱい時に作る目と口にシワを寄せた顔になってそう彼は応えた。
メキシコではかりんを生で食べると料理上手なアンジェリカさん(アンちゃん)が教えてくれた。
「メキシコじゃ、チリとかスパイスたっぷりのソースをかけてそのまま生のかりんを食べるのよ。 私のお父さんの大好物よ。」國が変われば食べ方も違うと驚いていると「それに香りがすごくいいでしょう、 このフルーツ。 だからメキシコでは芳香剤みたいに家のテーブルの真ん中に置いておくのよ。」アンちゃんが付け加える。なるほど、このフルーティーな香り、 納得、納得。
家に帰ってリヴィングルームの真ん中に置いてみた。 うん、自然な甘い香り。のどかな気分。果物好きなQちゃんを驚かせちゃおう! としさん有難う。
「ただいま~!」Qちゃんのお帰りだ。
「ほらこの果物いい香りでしょう。知ってる、この果物?」知ったかぶりをする私がノースウェストの果物、フルーツパイで育ったQちゃんにこんなことを聞くことは邪道だったようだ。
「もちろん!QUINCE だろ。 QUINCEパイ大好きだもん。去年の感謝際でジェファーがホームメイドQUINCEパイを焼いてくれただろう、あれだよ。それにQUINCEジャムもくれただろう?」上衣をクローゼットに掛けながらQちゃんがいう。
あ、あ、あ! 去年の感謝際、ジェファーさんとシラさん、二人で仲良くブルーベリーパイ、ラズベリーパイ、(?)パイを焼いて来てたな。元々フルーツパイには興味がないけど、 3つの中でひとつだけ酸っぱくて、おいしくないパイがあったのを思い出す。英語で説明されたけど、お腹一ぱいで無視してたな(笑)。 あれがこの果物かりん/QUINCE か。
小麦の替りにスペルト小麦を買ってある。久し振りにQちゃんにかりんクランブルを焼いあげることにした。
分量は、適当、 適当。フィリングは合格の味。けどクランブルのバターがどうも少ないような、、、、。まっ、いいか。
まっ、いいかの外だったがオーブンから出してみると、、、あ~こりゃ失敗。
「これは失敗作だ。」と叫いていると、 Qちゃんが「食べてみていいかな?」と試食する。「ほっ、 ほっ、 ほっ! 旨いじゃないか! 甘くなくてスペルト小麦だし上出来だよ!」
慰めはいらない、捨てると言う私にQちゃんが「NANA、僕は美味しいフルーツパイを食べて育った人間なんだよ。その僕が旨いといってるんだから信じてほしい。見た目はクランブルには程遠いけど、それなら頭の気転をきかせればいいのさ。QUINCEクランブルじゃなくて、 QUINCEバーにしてみてごらん。いけるぞ、 このQUINCEバー。」
発想を替える。QUINCEクリンブルの中に向日葵の種をいれてコネコネ。Qちゃんのアドバイスを聞いて形を整えてQUINCEバーにして焼いてみた。
今夜はバハイ教のクラスがある日だったのを忘れてた!!!
お客さんにQUINCEバーを出すのは嫌だと言うと「アメリカ人の味はアメリカ人だから分かるときもあるんだよ。 僕を信じてごらん。」と一言。
昨日は夜中に目が覚めて睡眠不足の私。お客さんが来る前におやすみなさい。なにやらワイワイ笑い声がきこえる。
翌朝、QUINCEバーがなくなっている!まさか、まさか!
トイレで起きて来たQちゃん「QUINCEバー、すごく大好評。皆、Trader Joe's/ヘルス食品店で買ったものだと思い込んで食べてたよ(笑)。 QUINCEバーはNANAの手作りで、NANA は料理レシピは残さない人だって言ったら、皆ガッカリしてたよ(笑)。 言っただろう? これスゴクヘルシーでアメリカ人好きだって。 これからはベイキング(焼き菓子)に関しては『僕の舌』信頼してくれるね?」
はい。 これからはもっと素直になります。
そして切っ掛けを作ってくれたとしさんに感謝!としさん、かりんをくれて有難う。 初めて見ました。 「私にもQUINCEバー1本残しておいてくれたらよかったのに!」ってコメントされる前に私が先に書いておこう♪
味噌ポーク
南瓜、芽キャベツ、 トマトのローストサラダ
黒豆玄米ごはん