ハワイに住んでいた時この日のために家の中をデコレートしたり、感謝祭のご馳走を準備したりと大忙しだった。ターキーやパンプキンパイを焼いたり、その他の前菜や軽食スナックなど数日前から準備をしたもんだ。
良い義理の娘として認められたくて、頼まれもしないのに頑張り過ぎて自分一人でストレスを溜めて空回り。そんな苦い経験を踏んだからこそ、オレゴンでのQちゃんとユックリとした今の生活に喜びを見い出して日々過ごせることができる。誰のためでもなく自分だけの贅沢な時間を自分流に過ごす喜びを。
今はアパート暮らし。部屋は小さいし、キッチンも小さいし、なんたって家にはテーブルがないほどのシンプルな生活振り。感謝祭でQちゃんの家族を招待できる環境ではない。それは私の言い訳だ、きっと。
今は誰かに指導権を握らせて、夕食時間にピンポーンと玄関のベルを鳴らして「Happy Thanksgiving!」とお呼ばれされた方が気楽でいいことが分かった。家族の誰かに甘えることも人生には必要なんだとオレゴンに移ってきてから分かってきた。 ノースウェストのQちゃんの家族を今までずっと拒んできた私を彼らは心良く迎えてくれた。有難う、my new family in NW.
オレゴンに移って来てから仕事とアパートを見つけるまでの3週間はQちゃんの妹ジェアタ一家にお世話になった。ジェアタとトンガ人の御主人シオネ、そしてヤンチャ盛りの3人の子ども達。 私とQちゃんが同居させてもらった3週間はトンガからシオネのご両親も滞在していて毎日トンガンフードを食べたり、 ワイワイ、 ガヤガヤと愉しかった。
先月ジェアタやラニママから感謝祭の招待状メールが届く、去年と同じだ。ジェアタに何か必要な食べ物はいるかと聞くと「そうね、 寿司なんていいわね」とメールの返答。
世間様は感謝祭の日は連休だけど私は仕事。簡単な寿司なら大丈夫、と Qちゃんがジェアタの大好物の稲荷寿司を作ることになった。朝6時出勤前に私が寿司飯を用意しておいて、買っておいた市販の稲荷パッケージの味付け油揚げの中にご飯を入れるだけ。 これならQちゃんでも(園児にだって)出来る簡単で楽しいアクティビィティーだ。これが二人の今年の感謝祭の共同作業計画になった。
今月のアイダホの想い出旅行の疲れでQちゃんが体調を壊してしまった。ここ1週間 Qちゃんは風邪で私の替りに蒲団をダッコしている情態だ。あれだけ「稲荷は僕が作るから任せてくれ!」と意気込んでいたのに、今では「今年はジュースだけにしようか、、、」弱気になっている。
Qちゃん、心配しなくても大丈夫よ。 簡単な寿司なら私が作るわよ、お世話になってるジェアタ、あなたの家族、そして私の家族ですもの。
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ジェアタの大好物の稲荷。 簡単な細巻も作って持って行こう! さあ、仕事に行ってきます。
仕事が終ったのは午後2時前だ。帰宅するとQちゃんが細々しい、消えるような声で「お寿司を作ってくれて有難う。皆喜ぶよ。」テッシュで鼻をグズグズ、Qちゃん大丈夫?
風邪を引くとQちゃんは喉をやられるタイプ。こんな日は黙って安静にするのが一番なのに、こんな時に感謝祭。よりによってQちゃんの家族はみんな話好きで 「沈黙」という時間がない。いつも誰かが喋っている環境だ。だからQちゃんは喋ると止まらない。 寝室で服を替える、ひまわりさんがくれたワインレッドのセーターを着ていこう。 タートルネックが温かい。
朝作った寿司と5本のフルーツサイダーを両腕に抱え、二人でジェアタ一家のあるNE ポートランドへ向かう。
今日はとても良い天候でポートランドダウンタウンのフリーウェイからセント・ヘレンズ山とフッド山がくっきりと見える。
20分位ドライブすると懐かしいジェアタとシオネ一家に到着だ。その前にダウンタウンから見える程奇麗じゃないけど、うっすらと彼方に見えるセント・ヘレンズ山の写真を撮ろうと車を止める。
いまいちだけど、まっいいか。道路でカメラを片手にウロウロ、、、すると
プップップー、プップップー、突然車のクラクション。事故でもあったのか? それとも撮影禁止の警告か?と道端でキョロキョロする私に車の中のQちゃんが笑みを浮かべて道路の前方を指差した。
いやっだ~!あの車、ラニママとシオネじゃないの? 「二人で夕食に足りない食材でも買いに行くんだろう」Qちゃんの予想。ははは、写真撮っちゃえ!
1分で家に到着。すでに車が数台止めてある。ラニママのレンタカー、シオネのトラック、それにジェームス ジェファソンさんの車。寿司とドリンクを持って懐かしいドアを開ける「Hello! Happy Thanksgiving!」
「Well, well, well! Look who is here! Quddus, Quddus, Quddus!」
家中に響くあの大きな太い声。一番バッターで出迎えてくれたのはこの人!いつもいつも陽気でエネルギッシュなQちゃんの継父(だった)ジェームス ジェファソンさん、Qちゃんの弟ジェファーと妹ジェアタのお父さんだ。
ジェアタがリビングルームでQちゃんの大好物の甘~いヤムイモをブラウンシュガー、 バター、ココナッツミルクで混ぜ合わせていた。 ふむふむ、今年の感謝祭の夕食の準備はかなり遅れているようだな、キッチンのシンクには山盛りになった大鍋達が寝転んでいた。
ジェアタに写真を撮るというと「準備してないから駄目よ!」なんて云うけれど彼女はそのままでもお洒落な女性だ。そんな彼女は病院で精神問題を抱える若者のカウンセリング兼治療プロブラムのコーディネーターをしているバリバリのキャリアウーマン。同じ歳だけど姉御肌で私が尊敬するアメリカ人女性の一人だ。
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そうこうしてると、いたいた ヤンチャ坊主が!NANAおばちゃんに元気で大きなハグしてよ!
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しばらくすると弟のジェファーさんと恋人のシラさんカップルがご到着。久振りね、 はい、 はい、社交辞令で二人にハグ、 ハグ。
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ジェファーはいつもソファーで長い足を広げて寛ぐのよね。Qちゃんはしないわよ、あらら兄弟の比較をしたら駄目ね! ねえ、写真撮ってもいいかしら?
ちょこっと、裏庭の暖炉ででいつものあれをしてる Qちゃんの様子を見に行こう。
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「来てくれて本当に嬉しいよ、 スイートパイ!」力強い、太々しい、この響き渡る声はジェームス ジェファソンさんだ。 何故か家族は皆彼のことをジェームス ジェファソンと呼ぶ。ジェームス ジェファソンさんはいつもニコニコ、ニコニコ、 口からはいつも褒め言葉、 パジティブ思考、元気でハハハハハと笑っている人だ。
私もニコニコ、ニコニコ人間なので自慢するけど彼のお気に入りの女性だそうだ。私の顔を見るなり何時もそう云ってくれる唯一の男性だ。(その夜、台所でジェームス ジェファソンさんはシラさんに同じことを云っていた。)
ジェームス ジェファソンさんとのハグは息ができない程ギュートと長~くハグをする。少なくとも30秒はハグをする。 大好きな人とのハグは眠くなるのだ!タカンガ、おじいちゃんとNANAおばちゃんと一緒に写真をとろう!
ジェームス ジェファソンさんは料理の達人だ。ルイジアナ育ちの彼が作るソウルフードで育ったQちゃんは今でも「なんちゃってNANA流ソウルフード」を作ると餌を待つお坐りをした犬のように喜ぶ。食材も自分の畑で作ったり、自ら農家に足を運ぶほどの徹底振りだ。今回は自分の家で収獲した葡萄を箱いっぱいにもって来ていた。ジェームス ジェファソンさんみたいにとっても甘~い!
ジェームス ジェファソンさんは70歳(と本人は云うが家族は誰も知らない)だが体力はまだまだ40代並だ。 見よ!この腕の筋肉を!Qちゃんより凄い!うー寒い、寒い。 じゃ、家の中に入ることにしょう。
家のリビングルームでシオネが部屋の片ずけをしていた。 その側でタラちゃんが電話で遊んでる。 こうやって子供は日常の生活(電話の扱い方)を学んでいくんだね。ほのぼの、ほのぼの。
「もしもし、、、、」誰と話してるの、タラちゃん?
お父さんと一緒に写真を撮ろう!モエリカ(右)、 シオネ(中)、 タカンガ(左)、 タラクエバ(上)。
ジェームス ジェファソンさんが段ボール箱一ぱいに様々な林檎を持って来ていた!ジェームス ジェファソンさんはすこし早いけどワシントン州ヤキマから毎回旬の幸を運んでくれるサンタクロースなのだ。林檎を毎日食べないと気が済まない人物。知ってるのよ、いつものように内緒で持って帰るんでしょう? 公共の場だから顔を伏せておいてあげるけど、これ他人の家でやったら窃盗よ。ねぇ、どうせ頂くなら、そこにあるハニークリスピーを頂いていきましょう!あっ、いけない!私も共犯者になってる!
ジャンボ林檎と一緒に!
きゃ~可愛い! タラちゃん、やっぱり女の子ね。 おばちゃん、抱き締めたくなっちゃうわ!
グランマ(おばあちゃん)と呼ばれるのが嫌で、昔から 孫達にグラングランと呼ばせているラニママ。「グラングランと歌いましょう♪♪」孫達と歌うラニママ。
そろそろテーブルセットの準備をしないとね。お手伝いしてくれる人はだぁ~れ? モエリカはやっぱりお兄ちゃん!
タカンガはQちゃんと同じ次男坊でいつものほほほほ~ん。ほら、座ってないでお手伝い、お手伝い!
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後半に続く。