2007年11月13日火曜日

12年振り、アイダホ州ルイストンに帰ってみます-- (1)

15年前の春。アイダホ州のルイストンという小さな町に来た。その町にはサーモンが帰って来るスネーク川やクリアウォター川があり釣人にはたまらない場所となっている。

静かな町ルイストンで4年間アメリカでの大学生活を経験した。Qちゃんと私はスネーク川の水の下で15年前出会った二匹の幼いサーモンかもしれない。

大学を卒業する4年間 喧嘩をしたり、離れたりくっ付いたり、川中をすれ違う二匹のサーモンだった。大学卒業を期に小さなルイストンの町を離れ、二匹は別々の川へ向かうはずだった。

QちゃんサーモンはニューヨークのNew School for Social Research (現在のThe New School University大学院プログラム)でNon-profit organazation を学ぶことが決まっていたし、 NANAサーモンは寿司職人になりたくてニューオリンズに向かった。1995年の卒業間近の春4月だ。

説明するのが面倒くさいから省くが、Qちゃんと私は結局同じ川を一緒に泳いで行くことに決めた、もう12年前のことだ。

夫婦サーモンになった二人はそれからいろんな場所を一緒に泳いで来た。川の流れが心地良い時もあれば、冬場の冷たい水流に叩きのまれそうになったこともある。 それでもQちゃん は先頭になって泳いで来たし、私も後ろを一所懸命について来た。Qちゃんの後を泳いで行くのがいやになって一人で泳ごうと考え
たことは数え切れないほどあるが荒々しい川を一人で泳いでいく勇気は私にはなかった。Qちゃんも私も夫婦サーモンとして泳ぎ始めてまだ12年、失敗から学ぶことは毎日だ。そう想い直してこの12年なんとか二匹労りってここまで泳いで来た。

そしてハワイからノースウエストに戻って来て1年過ぎた。

Qちゃんサーモンは懐かしいノースウエストに帰って来て嬉しいのだ。懐かしい想い出のスネーク川やクリアウォター川があるルイストンやラップウェイに定期的にスイスイと泳いで帰っている。 その間NANAサーモンはオレゴン州とワシントン州を分けるゆったりしたコロンビア川で気楽にQちゃんサーモンが無事に帰って来るのを待っている。

NANAサーモンはあまりルイストンの町に戻りたいと思っていない。仕事が忙しいという理由で言い訳をしてきたが、余りにもQちゃんサーモンや友達サーモンが1度顔を見せろと言うので、重い腰をよっこらせと上げて12年振りにスネーク川まで泳いで帰ることにした。 もちろんQちゃんサーモンの後ろにぴったりとついて行くから安心だ。

二匹は金曜日の朝8時20分にオレゴンのアパートを出発した。車にガソリンを入れ、タイヤの圧力を点検して、長旅の軽いスナックを買った。シアトルまで続く I-5 の高速道路に乗った時すでに9時近くになっていた。
ノースウェストの高速道路は繁った森林に囲まれているところが多い、日本の景色を思い出す。
通勤ラッシュは調度過ぎたようだ、車はスイスイと前に進む。
ウィラメット川沿いに見えるポートランドのオフィス街。オレゴニアンが仕事を始めた頃だろう。コーヒーの香ばしい香りが漂ってきそうだ。
夫婦サーモン、この4日間はオレゴニアンからブレイク。

アイダホ州はワシントン州とオレゴン州の東部に隣接する。ポートランド方向からだとコロンビア川に沿って続く高速道路I- 84 east が通常ルートらしい。"らしい"と表現したのは、NANAサーモンがこの高速道路I- 84 を泳ぐのは今回がたったの2度目だからだ。

途中I- 84 にあるオレゴン州の観光スポットMultnomah Falls で一休み。

週末金曜日の朝の授業、ポートランドから小学生や中学生がスクールトリップに訪れていた。ハワイでよくスクールトリップを引率していたQちゃんサーモン、引率の先生達とお話開始。
いつものことだとNANAサーモンは一人でブラブラ。最後には写真を撮ってあげているQちゃんサーモン。 側にいた観光客の老夫婦心優しいQちゃんサーモンの行いに心を動かされ、夫婦サーモンの写真も撮ってあげると二匹で滝の前に立たされた。急いで笑顔を作った夫婦サーモン。

高速道路I- 84ルートのドライブは 前方に現れるノースウェストの自然の美しさを車内の硝子越しから満喫できる。

右手にそびえる山、 谷、 岩、木々はジットリとしている。 この地点はいつも小雨が振っていると、Qちゃんサーモン。

写真は撮れなかったが岩場に写る紅葉は言葉にできない、大地の強さとその場を共有する華やかさの絶妙な美。夫婦も男の強さと女の丸さが共有して和となるのだろう。

そうこうしているとトラウトデールに到着。ツアー案内所でトイレ休憩も兼ねて一休み。Qちゃんは熱いコーヒーを買う、ミルクお砂糖は入れない。 これからまだ4時間位のドライブだ。

この日Qちゃんサーモンにはこの場所で行う秘密ミッションがあった。それは後でのお楽しみ。

先程のゴツゴツした岩や紅葉から打って変わった景色、透き通る空と広がる岩(?)。

東へ続くI- 84は途中南よりにカーブを描きアイダホ州の州都ボイシまで続く。ボイシはアイダホ州の南に位置していてそこから私達の目的地ルイストンまで北へ車で7時間かかる。その道路コンディションは決して良いとはいえない。ちなみに7時間ドライブはルイストンからポートランドと大体同じ時間だ。

この高速道路I- 84をある地点で下りて北に隣接するワシントン州に入るルートでQちゃんサーモンはいつもルイストンに帰るのだ。

今回は甘くて美味しいワラワラ玉葱で有名なワシントン州ワラワラ市を通るルートらしい。Qちゃんサーモン、地元で慣れているから、あれこれ、あれこれ聞いてもないのに地理、歴史、農業/産業とすっかり社会科の先生になっている。めだかの学校じゃなくて、これじゃバケーションを犠牲にしたNANAサーモンの"補修授業"だ。逃げたくても狭い車内は二人だけ。

グットタイミング!Qちゃんサーモンの大好きな曲America の Sister Golden Hair だ!「この曲いいよね。」Qちゃんの講義を遮ってCDのボリュウムをあげた。http://www.youtube.com/watch?v=SGFt82coos0 授業内容を忘れて一緒になって唄うQちゃんサーモン、計画成功。

Qちゃんは少年期をワシントン州ヤキマ地方で過ごした。この当たり一体は林檎や葡萄園が広がり、小麦畑が見渡す限りのゴールデン地帯だ。だからなのかQちゃんはこの素朴で広大なワシントン州ヤキマ地帯のような人柄だ。「なんじゃそりゃ? どんな性格やねん? 」大阪人からつっこまれてるで。

ワラワラ市を過ぎ去ると今度は国道12号を走る。漠然と続く丘をひたすら走るのみだ。

「前方の丘、 写真撮ってごらん。」Qちゃんが突然言った。写真におさめるほど大した風景ではないように見えるけど。車のスピードを上げて近ずくと、、、

若草が黄緑に、刈り入れが終った小麦がゴールドに、遠くの丘は野草や草花が土と一帯化して薄紫に、太陽に照らされて乾燥した丘の表面は白土に、一瞬に過ぎ去る自然のキャンパスにつめられた大地の色彩ハーモニー。Qちゃんはこれをカメラに収めたかったのだ。

退屈なほどに同じ景色が続く丘。

ぺー君、お疲れ気味のパパの替りに運転をお手伝い。

アイダホ州の最低地点はスネーク川及びワシントン州へ続くクリアウォーター川の合流点ルイストン。 この丘を超えるとルイストン市に隣接するワシントン州のクラークストンだ。

「スネーク川だ!」Qちゃんサーモンがパシャパシャと水しぶきをあげるように叫んだ。時間は午後3時半を過ぎていた。